こんにちはnaoです。
今回は、nao_garageの看板娘Norton Commando 961 caferacerのオイル交換編について投稿します。
実は今までノータン(愛称)のオイル交換は、ディラー(正規販売店)にお願いしていました。実はノータンは、正規輸入代理店(👉PCI株式会社)の広報車両、まさしく看板娘としての存在でした。たまたま、このPCIのHPを閲覧したところ看板娘が売りに出ていました。運よく安価で手に入り新車登録できました。さらに2年の新車補償も付帯して貰えました。
そのため、過去の大きな故障も補償修理する事が出来ました。(故障内容は👉還暦ライダーによるNorton Command 961 Cafe Racer故障と修理記録をご覧ください)ただ、今では輸入代理店のサポートが受けられず、補償も切れ純正部品の供給も止まった状態です。そのため、信頼をおいているディーラーである事は間違いないのですが、今後も変わりなくサービスを受けるためにも、オイル交換から定期点検、車検整備までお願いしています。
ただ、補償が切れた後の故障修理は何とか自力でやってきた事もあり、今回オイル交換位は自力でと考え、記録の意味も含め行う事にしました。
目次
Norton Commandのオイル潤滑方式について
オイル潤滑方式には大きく二つあります。Norton Commandoのオイル潤滑方式は、ドライサンプ方式を採用しています。
簡単に説明しますと、下記のとおりです。
- ウェットサンプ:オイルパン(クランクケースの下)にオイルをためる方式(大半の市販車)。
- ドライサンプ:クランクケース下部にオイルをためず、外付けのオイルタンクに貯蔵し、ポンプでエンジンに送る方式。
恥ずかしながら、今回の投稿で初めて“ドライサンプ”の意味をちゃんと理解しました。
sumpとは英語で「オイル溜まり」。つまり“dry sump”は「乾いたオイルパン」、オイルを貯めない方式なんですね。なるほど納得です。
ドライサンプのメリット
クランクケースを小さくできる
→ オイルパンを持たないので、エンジン搭載位置を低くでき、重心が下がる。
オイル容量を大きく取れる
→ 別体タンクなので大容量を確保しやすい。油温上昇を抑え、耐久性向上。
オイルの泡立ちを防ぎやすい
→ クランクが直接オイルに触れないので、撹拌による泡立ち・抵抗が少ない。
ハードな走行で有利
→ 急加速・急減速・バンク時でもオイル片寄りの影響が小さい。
→ レースやスポーツ走行に向いている。
ドライサンプのデメリット
- 構造が複雑でコスト増
- ポンプ系統の増、タンク・配管など部品が多い。
- オイル交換が少し面倒
- エンジンだけでなくタンク側も抜く必要あり。⇒潤滑オイルライン用の配管の解体
- ドライサンプ特有の“ウェットサンピング現象”
- 長時間放置すると、タンクのオイルが重力でエンジン側に落ちて溜まる。
- 始動直後にクランクケース内のオイル量が増え、白煙が出る。⇒ガレージ内で始動し、白煙で真っ白になった経験あり。
ドライサンプ式はクラシック英国車の伝統的な特徴で、当時の高性能車の証であったようです。日本車では珍しく、Yamaha SR400やXT500など一部のモデルだけが同じ方式を採用しています。
オイル交換の準備編
自力交換のため、サービスマニュアル(英語版)のオイル交換編を見ていたところ、ある画像に目が止まりました。それはドレインワッシャーをトーチであぶっている画像です。注釈を翻訳してみると「4つの銅ワッシャーは、真っ赤になるまで加熱してから冷水に浸す(急冷する)ことで再利用できます。」と記載がありました。

確かに前述したとおり、通常はオイルパンのドレインコック用のワッシャー1個で済むと思うのですが、オイルポンプからでている2本のオイルライン解体のため、ワッシャー4個が必要になるのです。
ただ、ドレインプラグには、ワッシャーは不要です。
ノータンは初期型の961Commandoで、実は初期型エンジンのみ砂型鋳造(サンドキャスト)なんです。
この「砂型鋳造」というのは、金属を砂で作った鋳型に流し込んで成形する昔ながらの製法で、表面に少し荒い質感が出ています。
後期モデル(MKⅡ)からの金型(ダイキャスト)製法に比べると、手作り感が強く、熱変形にも強い“肉厚で剛性の高いエンジン”に仕上がるようです。
こうしたところにも、クラシック英国車らしい味わいが残っていて、まさに“工芸品のようなバイク”だと感じます。
ワッシャーの再利用方法がマニュアルに記載があるのは、なんかかうなずけます。
そこで、今回はオイル交換整備記録から少し脱線して、メインの内容を「ドレインワッシャーの再利用方法」とその検証試験に移行しようと思います。
焼き鈍しとは?
上記の「・・真っ赤になるまで加熱してから冷水に浸す(急冷する)・・」について、私は金属加工等について詳しくなく、鉄の焼き入れのイメージで固くなるのでは?と思いましたが調べてみた結果、実は銅の場合は真逆の性質なんですね。
締め付けによって硬くなった銅は、内部に“応力”を溜めています。それを加熱することで結晶構造が再び整い、柔らかさを取り戻す。
だから、一度使った銅ワッシャーも“焼きなまし”で再利用できるという訳…です。何故か?
銅ワッシャーの役割は?
そもそも、銅ワッシャーの役割は何でしょうか?単なる「座金」ではなく、密閉と荷重分散の両方を担う重要部品です。
特に銅ワッシャーは、ドレインボルトやオイルラインなど“液体が漏れてはいけない箇所”で使われている事で解ります。
- 密閉(シール)効果
ボルトを締めたとき、ワッシャーが微妙に“潰れる”ことで、表面の小さな凹凸を埋めてオイル漏れを防ぎます。 - 荷重分散効果
ボルト頭の力を広い面積に分散し、母材(金属部品)を傷めにくくします。
つまり、ワッシャーは軽く変形してくれることが仕事なんですね。
焼き鈍しの効果を検証
銅ワッシャーを焼き鈍しすると、どれだけ柔らかくなるのか?気になると、試したくなる性分なので、今回の検証試験は「焼き鈍しの効果」について実験で試してみます。
焼き鈍し手順
用意するもの
・銅ワッシャー(今回、検証試験用にM26、外形32mm
厚み2mmの物を焼きました)
・ガスバーナー(市販品のカセットガス式トーチ)
・耐熱ピンセット等
⇒今回、塗装されたスプリングフックに引っ掛けて加熱しましたが、塗装が焼けてススがワッシャーに付着します。また、落としてしまった場合は、どうにもならないのでステンレス製のピンセットやペンチがお薦めです。
・水を入れた金属ボウルまたはバケツ

手順
①表面の汚れ・油を落とす

ワッシャーに付着しているオイルや汚れをウエスなどで拭き取ります。
※油が残っていると、加熱時に燃えてススが付きます。
今回新品のワッシャーを焼きましたが、新品でもウエスに汚れが移りましたので、特に再利用する場合は、必要だと思います。
②均一に加熱する

・バーナーの炎の青い部分(最も熱い部分)をワッシャーに当てます。
・全体が暗赤色(チェリーレッド)になるまで、およそ10〜20秒ほど加熱します。
・銅が徐々に黒ずみ、やがて赤熱していきます。
(今回のM26を使用したため、均一に加熱するのには少し時間が掛かりました。)
🔥作業時は必ず屋外や換気の良い場所で行い、耐熱手袋・保護メガネ等を着用してください。
③急冷する(水焼き)

加熱が終わったら、すぐに水中へドボン!
「ジューッ」と音を立てて冷却します。
画像に映り込んでいます、黒い浮遊物は、スプリングフックの塗装がススになって付着した模様です。
④冷却後の仕上げ
水を拭き取り、軽くブラシで酸化膜(黒ずみ)を落とします。
表面がややマットで赤みを帯びた銅色になっています。
焼きなましを学んで見えた、Norton整備の奥深さ
以上、今回は素人メカニックがNorton Commando 961のオイル交換整備をきっかけに、「焼きなまし」という少しマニアックな世界に足を踏み入れてみました。
調べてみると、銅ワッシャーを再利用するためには“柔らかく戻す”という一手間が欠かせないこと、そしてそれが単なる豆知識ではなく、クラシック車文化の中で受け継がれてきた知恵だということを感じました。
こうした工程を通して改めて感じたのは、Nortonが持つクラシック構造の奥深さです。
砂型エンジンに象徴される“手作り感”や“金属の温もり”が、まさに整備の中に息づいているのですね。
次回は、実際に焼きなましを行った銅ワッシャーと未焼きワッシャーを使い、その効果を実験で確かめてみた結果をお伝えします。
ペットボトルの水を重りにした“たわみ試験”で、柔らかくなった銅のしなり具合を視覚的に確認します。どうぞお楽しみに。
※実際に自分のガレージで試してみた道具を紹介していますが、加熱作業などは安全第一でお願いします。
🏍️【追記】ショッピングモールで“あの名車”を発見しました!
このブログを投稿後の2025年11月某日、たまたまヤマハ発動機本社のある磐田市内のショッピングモールに行ったところ……
ドライサンプの名車「YAMAHA XT500」 が展示されてました!
まさか、こんな場所で出会えるとは思わずパシャリ📸
Norton Commando 961 と同じくドライサンプ方式を採用した1台で、
SR500/SR400のご先祖さまとしても有名ですね。
写真と簡単な紹介文を最後に添えておきます。

ドライサンプ構造を持つ名車で、現代車とは異なるオイル循環方式の象徴的モデル。


ドライサンプ採用の背景や、
耐久性の高さが説明されている。
その他、歴代の名車が展示されて
いました。
なお、ヤマハ発動機
コミュニケーションプラザには、
常時展示されています。
興味のある方は、見学にいかれては、
いかがでしょうか?!
👉展示コレクションサイトはこちら