Norton Commando 961オイル交換整備の実録編(後編)

こんにちは、naoです。

今回は、Norton Commando 961 オイル交換整備“実録編”の後編です。
前編ではオイル抜き取り工程とともに、作業を通じて感じた”英国車ならではの構造美”をお届けしました。

👉 前編:Norton Commando 961オイル交換整備の実録編

後編となる今回は、オイル注入前の重要工程である

  • フィルター交換の仕上げ
  • ドレインプラグの締め付け
  • オイルラインの復元
  • トルク管理のポイント

このあたりを写真付きで紹介します。

特に締め付けトルクについては、今回設定したトルク値一覧も後半でまとめていますので、
トルクレンチの選び方で迷っている方にも参考になる内容かと思います。

英国クラシックの香りを残しつつ、現代バイクとしての精度と信頼性も追求できるのが961の魅力。
その“整備の手触り”を、今回も一緒に楽しんでいただければ嬉しいです。

※この記事はアマチュア整備の実録です。マニュアルに基づいて作業していますが、一部独自判断も含まれます。作業の際は自己責任でお願いします。

目次

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オイル交換作業の流れ(後編)

前編では、使用済みフィルターの取り外しまで進みました。
後編は、いよいよ新品フィルターの組み込みから入ります。

オイルフィルター組み込み

オイルフィルターの外箱から型番確認とフィルター本体、付属品の画像
オイルフィルターの型番とフィルター本体、付属品

まず、フィルター調達について一言。
ご存じの方も多いと思いますが、
Norton純正部品の流通は“気まぐれ英国仕様”
正規輸入元の在庫は基本ゼロ、
お世話になっているディーラーさんの棚に
“わずかに残るストック”が頼みの綱です。

ところが今回、お世話になっている海外の “Norton Motorcycle Forums” にて、
Norton 961 Alternate Parts List(代替部品リスト)」というノートン乗りなら、誰でもご存じの代替リストのお世話に。そう、まさにノートン乗りの救世主的存在です。

このオイルフィルター、なんとメルセデス(ベンツ)と互換あり。

英国車にドイツ製フィルターという、まさかの国際協力体制が成立してます(笑)

画像のフィルターは BOSCH製:P 9147
付属のOリング類は…残念ながらサイズは合いませんでした。

フィルター面の仕上げは良好で、紙質も精密感があって、正直“純正より安心感ある”気がしますね…(もしかして純正品もBOSCH製?…でしたら失礼)

フィルターカバーを閉じる


トルクレンチを使用して規定トルク値で締め付ける
規定トルク値で締め付け
今回使用したトルクレンチ(設定範囲5~25N・m)

フィルターカバーを元の位置に戻し、向きが合っていることを確認して仮締めします。
カバーとエンジン側の面がしっかり馴染んでいるかを指で触れて確認してから、いよいよ本締めです。

ここで、今回の主役のひとつ「トルクレンチ」の登場。
整備マニュアルでは、フィルターカバーの締め付けトルクは 6N・m と指定されていますので、まずはトルクレンチを規定値にセットします。

特にこのカバーは 4本のボルトで均等に締める 必要があります。
対角線順(または均等に順番をずらしながら)で少しずつ締めることで、面の歪みやオイル漏れを防げます。

 個人的には、この瞬間がとても好きです。
 “カチッ”と規定トルクで決まるあの感触、安心感がありますよね。

ここは小トルクなので、力み過ぎず、指先の感覚を大事にしようと思います。

ドレインプラグ取付け

前編で、ドレインプラグのOリングに損傷がないことを確認済みですので、そのまま組み込んでいきます。
ドレインプラグの指定締め付けトルク値は 20N・m です。

ところが、トルク値がしっかり指定されているにも関わらず、前編で紹介した別冊のマニュアルには――
「六角レンチとメガネレンチを組み合わせる」という変則的な使い方 が掲載されているのです。
さすがに、これには少し違和感を覚えました。

そしてここで、あることに気づきました。
オイル交換の話から少し脱線しますが――

「この整備マニュアル、公式のものではない!」

以前、ネットからダウンロードして印刷・製本していたのですが、改めて出典を確認したところ、
👉 Colorado Norton Works というサイトが発信元でした。

ここはアメリカの ノートン・コマンドー専門カスタムビルダー が運営している私設サイトで、
純正部品の販売やカスタムパーツ供給を行っている信頼性の高いショップではありますが、
公式メーカー発行の整備マニュアルではなかった のです。

実際、私も以前ここから部品を個人輸入したことがあり、
そのときに「961 Norton Workshop Manuals」ページからPDFをダウンロードしていたようです。
👉 961 Norton Workshop Manuals

つまり、今回参照しているマニュアルは カスタムビルダー独自編集版
それが、あの「六角+メガネの変則レンチ使用法」など、少し“職人流”な整備手順の理由だったわけです。

こうした発見もまた、英国車をいじる面白さのひとつですね。

それでは話を本題に戻します。

ドレインプラグの締め付けも、エキパイを事前には外してありますので、変則的な使い方をする事無く、先程のトルクレンチを使用して正規なトルクで締め付けします。

オイルラインの復元

次に、解体したオイルラインの復元に入ります。前編で紹介しましたように、既に純正品の銅ワッシャーは残っていませんでしたので、焼きなましは行わず新品の銅ワッシャーを購入して使うことに。

バンジョーボルトの締め付け

オイルライン解体前のオイルポンプ画像
画像はオイルライン解体前のオイルポンプ

六角バンジョーボルトの締め付けも、
規定トルク値での管理が必須です。
指定締め付けトルク値は 27N・m です。
画像は、解体前の物になりますが、
下部側は六角ソケットで対応できますが、
上部側はクランクケースと干渉するため使用不可。
このため、クローフットレンチを使います。

クローフットレンチの選定

アストロ製とKTC製のクロウフットとソケット

手前の画像がアストロプロダクツ製のクロウ。
奥の二つがKTC製の物になります。
何れも19mmです。
見ていただくとクロウの厚みが違うことが解ります。
そうなんです。
この少しの厚みの差でKTC製クロウは、
クランクケースに干渉して使用できませんでした。
余談ですが、KTCはアストロの4,5倍の価格。
仕上げの鏡面品質はさすがKTC、納得の精度です。

トルク補正の必要性

ここで、クロウフットを使う場合、注意が必要です。トルク値の補正が必要になります。上の画像をみていただきますと解りますが、ソケットは真下にトルクレンチの検知部(スプリング)が来ますが、クロウフットの場合は、数センチずれる事になります。

💡 トルク補正式
トルク換算値=A/(A+B)×必要なトルク値
で計算されます。

ここで、

  • A = トルクレンチの有効長(255mm)
  • B = クローフットの中心までの距離(30mm)

Bの値はKTC、アストロ共に同値でした。

したがって、
👉 換算トルク値:24.2N・m

トルクレンチの切り替え

下部バンジョーボルトの締め付けは、
最大25N・mのトルクレンチでは限界。
そのため、同メーカー製の、
東日製100N・m対応トルクレンチ
に切り替えます。
上部バンジョーボルトの締め付けは、
計算結果より、24.2N・mになりました。
したがって、再度25N・mのトルクレンチに
切り替えて使用ます。

参考資料

ここで、各数値についておよび補正に関するメーカの製品説明を紹介します。

👉KTC9.5sq.クローフットレンチWEBカタログ

👉東日製作所|製品情報|QL/QLE2

これらは、ガレ長が信頼して使用しているメーカーです。
こうしたトルク計算式や仕様情報を公開している点も信頼性の証といえます。

トルク設定値について

24.2N・mに設定した東日製トルクレンチ。QL25N5-1/4
24.2N・mに設定した東日製トルクレンチ

左記画像は24.2N・mに設定したものです。
100N・mまで対応のトルクレンチは、
25N・mまでのトルクレンチより、
最大設定値は4倍上がります。
ただし、一目盛りの調整範囲に差がでます。
前者が1N・mで後者が0.2N・mなります。
画像は、24.2N・mに設定したものです。

オイル注入

ここまで来ましたら、いよいよ仕上げのオイル注入工程にはいります。

指定オイル粘土は10W40、容量は2リットルです。

使用したMOTUL7100 2リットル
使用したMOTUL7100
タンク前の注入口よりジョーゴで注入開始
タンク前の注入口よりジョーゴで注入開始

今回使用したのは、MOTUL 7100(10W-40)

このオイルは、以前からディーラーでも使用しており、これまでオイル関連のトラブルは一切ありません。
真夏のツーリングでもシフトフィーリングが変化せず非常に良好だったため、今回も引き続き使用することにしました。

注入手順

タンク前方の注入口から、アルミ製ジョーゴを使ってオイルを注入します。
ジョーゴの下には柔らかいクロスを敷き、万が一のオイル垂れにも備えました。

💬 ワンポイントアドバイス
アルミジョーゴは静電気が起きにくく、注ぎ口の精度も高いため、狭い注入口の車両でも安心して使用できます。

オイルレベルゲージで注入量を確認する画像
オイルレベルゲージで注入量を確認

オイルを入れた後は、
マニュアルでは1分走行してから
オイルレベルゲージで規定量を
確認するよう記載があります。
今回はアイドリングで済ませました。
次の走行の機会に再度確認し
調整する事にします。

ミッションオイル交換

実は、Norton Commando 961 のミッションオイルは、エンジンオイルとは別体構造になっています。
今回はエンジンオイル交換と同時に、このミッションオイルの交換も実施しました。

指定オイル粘度は 10W-40、容量は 1.2リットル
エンジンオイルと同じ銘柄の MOTUL 7100 を使用します。

ミッションオイルドレインプラグの位置

ギアオイルのドレインプラグ位置と装着状態の画像
ギアオイルのドレインプラグ
ギアオイル注入口(トランスミッションベントキット装着)の画像
ギアオイル注入口(トランスミッションベントキット装着)

左写真中央がギアオイルのドレインプラグの部分になります。
右写真がギアオイル注入口になります。写真は、唯一のカスタム箇所でベントキットを装着しています。
ミッション内の圧を逃がすベントになります。先程紹介したColorado Norton Worksより個人輸入したものです。

こちらの締め付けトルクはエンジンオイルドレインと同様にそれぞれ20N・mになります。

ところで、ギアオイルの注入量ってどうやって確認するのでしょう?
オイルゲージはありません。
マニュアルを確認すると……

ミッションオイルレベルゲージプラグ画像
ミッションオイルレベルゲージプラグ

左記画像の六角先のプラグが
オイルレベルプラグのようです。
そしてプラグを外して、
規定量入っていれば
「バイクを穴の方に傾ければ、
   オイルが出てくる・・・」って。
つまり、
レベルプラグの穴から
 オイルがにじむ程度=満量
というわけですね。

これで Norton Commando 961 オイル交換(後編) の整備記録は完了です。

トルクレンチを使用して、ワンステップ毎に規定トルクで整備していくと、あとあと”ここ締たかな”的な思いが沸いてきません。ですので後戻りすることがなく、作業全体も“締まる”感覚がありますね。
オイルライン・バンジョー・ドレインプラグ、どれも一見単純ですが、実は 1N・mの差がトラブルを防ぐ大事な要素だと思いました。

今回は5〜25N・mと20〜100N・mの2本のトルクレンチを使い分けました。
Nortonに限らず、トルク管理を意識したメンテナンスはどんなバイクにも共通する「自ら安心を積み上げる整備」だと思います。

トルクレンチの選定について

今回のオイル交換で設定した締め付けトルク値について下記の表にまとめました。

締め付け箇所締め付けトルク値(N・m)備 考
オイルフィルターカバー4箇所均一に締め付け・ビットソケット
エンジンオイルドレインプラグ20ビットソケット
オイルポンプ下部バンジョー27ボックス
オイルポンプ上部バンジョー24.2クロウフットレンチ・換算値に変更
ミッションオイルドレイン20ビットソケット
「Norton Commando 961 各部締め付けトルク一覧

あくまで、Nortonでさらにドライサンプ車に限っての事ですのでメーカー・車種によって必ず必要になるとは限りませんが、足回りのメンテなども考えられている方は、上記の2本を選ばれると重宝すると思います。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

次回もぜひガレージで一緒に整備を楽しんでいただけたら幸いです。

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